愛ニ狂ッタ人
正直、最初は自分の雪愛への愛を疑ったものだ。
僕が、こんな平凡な彼女を好きになるわけない、と。
僕は幼い頃から言われてきた。
家の名に相応しい彼女を選べ、と。
僕はそれにただ、はい、と頷いていた。
別に、恋愛なんて興味なかったから。
彼女は、雪愛は、そんなに裕福な家庭の出身ではない。
だからと言って、貧乏でもないけど。
ごく普通のサラリーマンの父親と、ごく普通のパートの母親。
どこにでもある、ごく普通の一般家庭の女の子だ。
恋愛になんて興味ない。
結婚を強いられるのなら、テキトーに親が見つけた相手でも良い。
そう考えていたのに。
入学式の時、雪愛が発した、たった3文字の言葉。
それに僕は、簡単に惚れてしまったのだ。
…全く、僕は自分で自分がわからないよ。
雪愛には何度も聞かれている。
何故私が好きなの、と。
確かに、雪愛以上に可愛い子も美しい子も、僕の周りには溢れていた。
雪愛より器用で、雪愛よりお金持ちの家庭出身の子も。
だけど僕は、雪愛ではなくてはいけないのだ。
詳しい理由は、自分自身でもわからないけど。
確信しているのだ。
雪愛は僕の、
僕がずっと探し求めていた、
運命ノ人ダトネ……。