愛ニ狂ッタ人
布団の中でドキドキしていると。
部屋の扉が、ノックもなしに開く音を聞いた。
『静かにしていて―――』
そう言うように、彼が布団の上から、私の頭を撫でた。
「いたの?
いたのなら声かけなさいよ」
布団の外から聞こえたのは、女の人の声だった。
よくわからないけど、何だか怒っているように聞こえた。
「まぁ良いわ。
メイドに聞いたんだけど…お父様に会ったの?」
お父さん?
いたのかな?
会ったことないから、どんな人か知らないけど。
「会ったよ」
怒り口調の女の人に対し、彼の声に感情はこもっていなかった。
まるでカンニングペーパーでも読んでいるような、淡々とした口調だった。
「何していたの?
何て声をかけたの?」