愛ニ狂ッタ人








彼と出会うまで恋を知らなかった私は、彼から告白され、一瞬で恋に堕ちた。

最初は愛と憎しみが混ざった、“愛憎”という感情を向けていたけど。

次第に憎しみは消え、愛情のみ残った。





彼は、勿体ないぐらい優しかった。

毎日毎日、来る日も来る日も、私へ愛を囁いた。

私へ贈る、愛が、私はとても嬉しかった。

彼が、初めてだったから。

私を、愛してくれたのが。

だから私も、彼を初めて愛した。





常に誰かに囲まれていた彼は、私のみ近づけるようになった。

女子は勿論、男子とも彼は話さなくなった。

どうやら彼にとって、友人とはイラナイ存在だったみたい。

周りからは―――私もだが―――親友だとばかり思われていた男子も、彼はアッサリ突き放した。

彼へ話しかけられるのは、私だけになった。





女子は当然、男子までもが私と彼を嫌い始めた。

別に構わなかった。

彼さえ傍にいてくれれば。





彼と付き合いだして間もなくの頃。

私は彼に、私の抱えた“ある秘密”がバレてしまった。




私はバレるのを何よりも恐れていた。

―――孤独や、愛されたいと言う気持ちよりも。









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