愛ニ狂ッタ人
誰からも愛情を注がれなかった僕は、自然と周りに笑顔を振りまくようになった。
そうしたら、自然と誰からも好かれた。
嬉しかった…ほんの少しの間でも、寂しさを埋められるから。
だけど、好かれるのはほんの少しの間。
好かれるのは嬉しかったけど、「これだ」と言う女はいなかったし、何より自分が怖かった。
誰かを好きになったら、母と同じ道を辿ることになるのではないか。
僕はそういう特殊な空間で育ったから、それが日常だと思えるけど。
普通の、母が父を監禁することなんてない家の人が、僕から愛を注がれたら?
…僕は自然と、誰かを好きになることがなくなった。
そして、入学式の時、雪愛に出会った。
本当は、怖くてたまらなかった。
雪愛に拒否されてしまったら、僕はどうすれば良いのだろうか?
だけど、僕の中で暴走する愛を止められなくて。
僕は一眼レフカメラを片手に、雪愛を追いかけた。
雪愛の家を知り、雪愛に話しかけ、雪愛の日常を知った。
そこで気が付く。
雪愛と両親の関係に。
詳しいことは知れなかったけど、何故か大丈夫だと思えた。
雪愛になら、彼女になら、
僕は―――僕の愛を、注げるだろう、と。