愛ニ狂ッタ人








階段を下りると、見覚えのある玄関が見えてきた。

彼の靴と私の靴が、綺麗に並べられていた。

それと、ヒールの高そうな、女物の靴も。

…誰ノ、靴カシラ……?






長い螺旋階段の途中の、踊り場で、女物の靴を睨みつけていると。

左から、綺麗な女の人が歩いてきて、その靴を履きはじめた。

その女性も同時に睨んでいると、その人は私の睨みに気が付いたのか、振り向いた。






「……どなた?」





本当に、綺麗な人だった。

真っ直ぐな、日本人らしい腰までの漆黒の髪。

体の綺麗なラインに合った、真っ赤なワンピース。

手足は長く色白で、化粧も上手くて、大人の女性だ。





「…もしかして、あの子の彼女?」




ふっと微笑んだ女性に対し、私は迷わず頷いた。





「…そう。
あの子を、よろしく頼むわね」





女性は真っ赤なヒールの高い靴を履き、家を出て行った。








< 133 / 234 >

この作品をシェア

pagetop