愛ニ狂ッタ人
階段を下りると、見覚えのある玄関が見えてきた。
彼の靴と私の靴が、綺麗に並べられていた。
それと、ヒールの高そうな、女物の靴も。
…誰ノ、靴カシラ……?
長い螺旋階段の途中の、踊り場で、女物の靴を睨みつけていると。
左から、綺麗な女の人が歩いてきて、その靴を履きはじめた。
その女性も同時に睨んでいると、その人は私の睨みに気が付いたのか、振り向いた。
「……どなた?」
本当に、綺麗な人だった。
真っ直ぐな、日本人らしい腰までの漆黒の髪。
体の綺麗なラインに合った、真っ赤なワンピース。
手足は長く色白で、化粧も上手くて、大人の女性だ。
「…もしかして、あの子の彼女?」
ふっと微笑んだ女性に対し、私は迷わず頷いた。
「…そう。
あの子を、よろしく頼むわね」
女性は真っ赤なヒールの高い靴を履き、家を出て行った。