愛ニ狂ッタ人
お母さん、だろうか?
とても美人だった。
彼の母は、この家の社長だと、クラスメイトが話していた。
…確かに社長と言う肩書に合いそうな、しっかりした人だと思う。
良かった。
もしあの人が彼の恋人だったのなら。
私は迷わず、刺し殺していたかもしれない。
あんな、私の計画をアッサリかわされそうな真面目そうな人だもの。
計画を立てる時間が勿体ないから、迷わず殺していたわ。
私は階段を最後まで降り、彼を探した。
どこにいるの?私ノ王子様ハ。
私は一通り歩き、彼を見つけた。
頑丈そうな、南京錠のつけられている扉の前で、横たわっていた。
私は急いで、彼へ駆け寄った。
彼の名前を何度も呼ぶと、彼は目を開けて、ゆっくり微笑んだ。
私はそれだけで涙が溢れてきて、彼へ抱きついた。
「どこかへ、行ったのかと、思ったわ」
「…馬鹿だなぁ。
僕が雪愛以外の女の所に、行くわけないじゃん。
僕は、雪愛しか愛さないし、愛せないよ」
私は彼の胸に顔を埋め、小さな子どものように、号泣した。