愛ニ狂ッタ人
何事もなく、
私たちに関わる人たちも減り、
毎日楽しく過ごしていたけど。
最近、
私には彼に言えない悩み事が出来ていた。
「ユキちゃん」
「…またですか……」
私の家の前で、毎朝待ち伏せしている男が、出てきたのだ。
隣のクラスで、名前は確か―――。
「誰、でしたっけ?」
「酷いなぁユキちゃんは。
俺は、稲生(いのう)だよ」
…どうでも良いけど。
本当に、いなくなってほしい。
彼に言おうか、何度も迷った。
だけど、これ以上彼の手を血で染めたくない。