愛ニ狂ッタ人






イライラする。

彼に会いたい。

だけど、最近彼に会っていない。





彼はいずれ、あの名家を継ぐ身だ。

だから今、おばさんについて行って、勉強中らしい。

学校にはここ最近来ていないし、会う時間も滅多にないから。

私は寂しさを感じていた。






「ねぇユキちゃん。
王子じゃなくて、俺にしない?
俺なら、ユキちゃんを幸せに出来るよ」

「やめてください。
私は、彼しか愛せないと、決めているんです」

「それも言わされているんでしょ、アイツに。
アイツ、調教するのとか上手そうじゃん」

「調教なんてされていません。
私の、意思で彼の傍にいるんです」

「ユキちゃん。
俺の前には嘘つかないでよ。
本当は別れたいんでしょ、アイツと」

「別れたいなんて微塵も思っていません。
私が今別れたいと思っているのは、アナタです」





鬱陶しい。

毎日毎日、彼がいない隙を狙ってやってくるコイツが。

私に触れて良いのも話しかけて良いのも、彼だけなのに。





だけどただでさえ、彼とおばさんは忙しいんだ。

殺人でもして、迷惑なんてかけられない。




早く、戻ってきてよ。

思い切り、私を抱きしめてよ。




毎日毎日、

私はそれだけを願うのだ。









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