愛ニ狂ッタ人
学校にいる間も、コイツは私に関わる。
隣のクラスだからって、安心してはいけない。
休み時間の度に、私の教室を訪れ、話しかけてくるのだ。
やめて。
私が話したいのは、アンタじゃない。
そう何度も言うけど、稲生は聞く耳を持たない。
「ユキちゃん。
良い加減、俺に惚れなよ」
「毎日毎日、しつこいです。
私は、アンタなんて好きじゃないです」
「王子に束縛されているんだろ?
今は王子来ていないけど、そう言うよう言われているんだろ?
本当は俺のこと気になってきているけど、王子が怖いから本音を言えないんだろ?」
「盛大な勘違い、聞いていて恥ずかしいです」
彼が怖いなんて思わない。
私は彼を、一生愛していくのだから。
怖いと感じる相手を、私は愛せない。
「……ユキちゃん。
そんなにユキちゃんは、王子が好きなんだな?」
「前からそう言っているでしょう」
「…じゃあ、俺も諦めるわ……」
稲生が私に付きまとい始めて、1週間後のこと。
コイツは突然、そう切り出したのだ。
私は驚き、思わず席から立ちあがってしまった。