愛ニ狂ッタ人







私は彼を抱きしめながら、知ったことがある。

彼は何よりも、捨てられることに怯えていることを。




時間に関わらず呼び出すお父さんの元へ、行こうと思うのも。

成績を良くして、私に会うのをやめるほど、社長であるお母さんについて行くのも。

―――全て、自分が捨てられないため。





雪愛、私のためになりたいと思い、殺人など犯罪を犯すのも。

私に、飽きられないよう、捨てられないようするためだろう。

他のクラスメイトに、以前愛想を振りまいていたのも。





彼の全ての行動の原点を思い、私は涙を流しながら笑った。




素敵。

本当に、素敵。

私には勿体ないぐらい、ステキだわ。





大好きよ、大好き。

捨てるわけないじゃない、私が。

アナタの傍を離れるわけ、ないじゃない。




だから、逃げたいの。

彼のお父さんのように、出ることを諦めるつもりなんてない。

このままで良いや、なんて悟らないわ。






負けない。

彼に出会うまで。

私はどうにかして、抜け出す。





稲生ヲ、

殺シタトシテモ―――……。











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