愛ニ狂ッタ人
私は何日も、抜け出す方法を探った。
朝。
稲生は私に朝ご飯である食パンを焼いてくれる。
脱出の際空腹では、体力なんてつかないから。
私は毒がはいっていないか、慎重に食べた。
昼。
稲生は学校に行っていて、留守。
私は足枷をつけられ、動ける範囲で、抜け出せる場所を探す。
抜け出すために頭を使えば、お腹が空く。
稲生が自分用に作ったお弁当の残りを、私は食べた。
夜。
稲生はバイトなどしていないようで、私に付きっきりになる。
自分が傍にいるから安心しているのか、手錠ははめられたままだけど、足枷は外される。
逃げるとしたら、この瞬間だけど、稲生はいつでも私を監視していて。
少しでも玄関へ近づくものなら、気持ち悪い手で掴まれ、そのまま襲われた。
私がたった1人になれるのは、お風呂に入る瞬間だけ。
お風呂の中に窓なんてないから、逃げることは不可能。
大体この場所は2階だから、落ちて骨折でもしたら大変だ。
寝るときは手錠に足枷などで、稲生が寝ていても、逃げることは出来ない。
1度外せないか観察したものの、簡単に壊せるようなモノじゃない。
鎖も足枷自体も、頑丈な金属で出来ていて、稲生の言う通り、値段が結構するんだなと思えてしまう。
逃げること出来ない、難攻不落の狭いアパート。
私に出来ることは、
誰か助けに来ないか祈ることと、
夜中ひたすら泣くことしか出来なかった。