愛ニ狂ッタ人
僕が雪愛と出会ったのは、忘れもしない、入学式の時。
入学前から校長とかから
「これはこれは」
とか言われてお菓子など振舞われていた僕は、入学式で新入生代表の挨拶を行う役目を担った。
正直面倒だったから、僕はテキトーに済ませることにした。
嫌いだったから。
学校と言う存在も、僕をVIP待遇する教師も、僕のバックに立つ親も。
新入生代表の挨拶を終えた僕は、舞台から降り、自分の席へ戻った。
戻ってプログラムを見ると、次は今年の新入生でトップ合格を果たした生徒の挨拶だった。
今年のトップ合格は僕だったけど、僕が断った。
新入生代表の挨拶なんて、ただでさえ面倒なことを押し付けられたんだ。
2つも僕が代表なんて、嫌なことこの上ないから。
だから挨拶をするのは、トップ合格ではなく、2番合格の人。
僕が溜息をついた、その時だった。
「―――雪愛」
いつの間にか話し終えていた、2番合格の生徒の挨拶。
名字は聞いていなくて、聞こえたのは名前だけ。
ゆきめ、たった3文字の言葉。
僕は、惚れたんだ。
彼女の―――雪愛の、声に。