愛ニ狂ッタ人
第14章 彼女side
私は今日も、手錠や足枷を付けられた状態で、狭いアパートの畳の上にうつ伏せになっていた。
いつになったら、終わるんだろうか?
ここの所毎日、稲生に犯されている気がする。
もう私、処女じゃないわね、絶対に。
売女とか、ビッチとか…そういうのが似合う気がする。
綺麗なままで、いたかった。
私を愛してくれるのも、彼だけが良かった。
それさえも、無理なの?
私が彼のことに戻ることさえも、不可能なの?
私はこのまま、外の世界を知らないで、この狭い部屋に閉ざされるの?
大好きな彼に、会えないまま―――。
私はギュッと、どんな時も肌身離さず持っているケイタイを、抱いた。
チリンッと、ストラップについた鈴の音が空しく響く。
『相手が困っていたら、どこへでもこの翼で飛んで行けるように』
…そんな願いが込められた、彼からもらったもの。
私の大事な、宝物だった。
これをもらったのは、付き合う前。
「雪愛ちゃんに似合いそうだったから…」
と真っ赤な顔をして渡してきたのを、覚えている。
付き合ってから、コレがペアだと知った。
私にくれた時は、恋人でもないのにペアストラップだと言えなかったからだと言っていた。
真っ赤になって、少年のように無邪気に笑う彼は、素敵だった。
例えその手が血に染まっていようが。
私にとっては、紛れもない王子様なのだ。