愛ニ狂ッタ人
1人で教室で過ごしていた時や、
彼と付き合い始めた時や、
滝田愛佳を殺した時や、
彼の抱えていた闇を知った時も。
遠い昔に思えるのは、何故かしら?
一生助からないと、思っているから?
出られないと、悟ってしまったから?
「……駄目!」
私は叫んで、毎日何度も稲生の目を盗んでやっていた、足枷外しに取り掛かった。
手錠は、足枷が外れてから考えれば良い。
稲生は付けるとき、手袋なんてしていなかった。
だから手錠を付けたまま警察に行けば、手錠は外されるし、指紋が証拠になって、稲生は監禁罪で逮捕される。
そのためにはまず、足枷を外さなければ。
彼のお父さん、幹太さんみたいに悟ったり諦めたりなんて、しない。
よく物語とかで見る、自分を監禁した犯罪者になんて恋心も、抱かない。
生きて、帰るの。
彼の、元に。
「あ…あ…
ああああああああああっ!」
私は叫んで、思い切り両足をジタバタ動かした。