愛ニ狂ッタ人
「あの……」
私は稲生―――冬樹って名前だったんだ―――のことを話している警察に、聞いてみた。
「どうして、私のこと…」
稲生が口を滑らして話したわけじゃあるまい。
だったら誰が、警察に私が監禁されていると言ったのか?
「非通知で電話がかかってきたんだ」
「非通知…ですか?」
「そう。
高ノ宮区3丁目のアパートに、白川雪愛ちゃんがいるかもしれないから調べてほしいって」
誰だろう、そんな神業使えるのは。
「無事だったから良かったよ。
あ、手錠も外すね」
「お願いします」
手錠も外され、私の両手は久しぶりに自由になった。
「どうする?
親御さんに迎えに来てもらう?」
「あ、結構です。
このまま、帰れますので」
私は尚両親に迎えに来てもらった方が良いのでは、と薦める警察を気にせず、そのままアパートを離れて行った。