愛ニ狂ッタ人
☆☆
私たちは、彼の家へ向かった。
相変わらず、静かな家。
…ふと、あのアパートを思い出したけど。
寂しくも、辛くもないわ。
彼が、いるから。
ギュッと、強く、私を抱きしめてくれるから。
「ココア持ってくるから。
待っててくれる?」
「うんっ」
部屋を出て行った彼を見て、私はベッドから立ち上がる。
そして、4ケタの数字を並べて開く鍵のついた、扉に手をかけ、開けた。
彼の部屋にある、もう1つの部屋。
扉の中は、全て私の写真で埋められている。
私が彼と付き合う以前、隠していた秘密が彼にバレた時、彼が教えてくれた、彼の秘密。
彼の私と付き合う以前の趣味は、私の写真を隠し撮りすること。
簡潔に言ってしまえば、盗撮だ。
でも、嫌だとは思わないわ。
だって、私も“同じ”だったんだから。