愛ニ狂ッタ人
決して僕は、声などで惚れるような単純な男ではないと、自分でも思っていた。
外見などで好きだ嫌いだ判断する女に、飽き飽きしているのだから。
内面で判断しようと僕は決めていたはずだ。
彼女には、雪愛には、声だけで惚れた。
一目惚れだと言っても良い。
雪愛の名前はプログラムに書いてあったから。
入学式の時全員に渡された、クラス名簿を見て、雪愛の名前を探す。
自分でも信じられない行動だった。
だって僕は、今までこんな1人の女を調べることがあっただろうか?
―――絶対、ない。
僕は恋愛など、したことがないのだから。
正直に言うと、女に苦労した思い出はない。
両親似の整っているらしい顔立ちに、僕の名字。
それ目当てに近づいてくる女は、公園にある砂場の砂1つ1つと同じぐらい沢山いた。
大げさな表現だと自分でも思うけど、そう思わざるを得ないほど、僕の周りに女は沢山いた。
まぁどれも似たような女で、個性なんてなかったから、誰にも興味を示さなかったけど。
声だけ聞いた、あの雪愛という女は。
クラス名簿で探すほど、僕を虜にさせた。
知りたいと思った。
雪愛のことが。
名字なんて、関係ない。
雪愛。
必ずキミを、探すカラ―――。