愛ニ狂ッタ人
雪愛は簡単に見つかった。
僕と同じクラスだった。
教室へ入り、我先にと走ってきて僕を囲んだ女子たちにテキトーに笑顔を返しながら、雪愛を探した。
どこだ?
どこにいるんだ?
僕の、雪愛は―――……。
見つけた。
教卓近くの席で、本を読んでいる彼女を。
今すぐ話しかけたいと思った。
彼女の顔を、改めて見たいと思った。
そして、僕を一瞬で夢中にさせた、
アノ美しい声を、聞きたかった―――。
だけど周りに立つ邪魔以外の何物でもない女たちが、僕の行く手を塞いだ。
僕は雪愛に会いに行きたいのに。
どうして、邪魔をスルンダ……。
「……どいて、くれないかな?」
今すぐ爆発させたい殺気を抑えながら女子に言うと。
女子はキモいという言葉しか見つからない黄色い声を出して、離れて行った。
違う。
聞きたいのは、お前らじゃない。
あの子だけだ。
雪愛の声だけだ。