愛ニ狂ッタ人
「奥様ですか!
出会いはどこです?うん?」
頭は寂しいのに、学生みたいだな、このオジサン。
僕は内心笑いながら、答える。
「高校生の時の入学式です」
「入学式?」
「彼女が、壇上でスピーチをしたんです。
その時に……」
「一目惚れってやつですか!
うーん、素晴らしい」
僕は「ありがとうございます」と笑顔を返した。
その後は、経済学の教授だけあって、上手く若王子家を切り盛りする方法などを聞かれた。
そして、1時間ほどのテレビの収録を終えた。
僕は用意された楽屋へ戻って、急いでスーツから私服に着替えて、テレビ局を出る。
地下の駐車場に停めた車へ乗りこみ、急いで自宅へと車を走らせた。
「お父様ァ!お帰りなさい!」
「雪魅(ゆきみ)。ただいま」
家に入るなり走り寄ってきた娘の頭を、僕は撫でた。