愛ニ狂ッタ人
「……ウフフ」
生徒手帳の中に挟んである写真を見て、思わず笑みを漏らす。
若王子家の令嬢に相応しい男。
あたしはずっと探していて、最近ようやく見つけた。
この間転校してきた、カレ。
頭も良くてスポーツ万能で、誰に対しても優しいカレ。
カレが私のクラスで自己紹介をした際、運命だと思った。
家柄も良いみたいで、まさに王子様。
若王子家のお姫様であるあたしに、相応しいカレ。
あたしは自分から、カレへ学校案内をする役目を担った。
前は臆病者だったから、そんなことしなかった。
教室へ入って来た途端、女子全員の目をハートマークに染めたカレ。
カレの案内係に立候補する人は多いはず。
だけどあたしは、もう過去のあたしじゃない。
あたしは由緒ある名家・若王子家の令嬢なの。
…誰モあたしニ、
逆ラエナイノ……。