愛ニ狂ッタ人
あたしが手を挙げた途端、クラスメイトは全員手を下げた。
担任もあたしを案内係に指名してくれた。
…本当、面白い世界になったものね。
前のあたしなら、信じられない光景だった。
あたしはカレに沢山話しかけた。
さり気なく、好きな女子のタイプも。
『オレの好きなタイプ?
面白いこと聞くんだね。
オレは、やっぱり優しい子が好きだな。
他人のためなら自分を犠牲に出来る子が』
他人のために自分を犠牲に出来る、優しい子ね。
しっかり脳内に録音した。
……好きだわ。
あたし、カレのこと。
今もカレの写真を眺めて、1人微笑む。
生徒手帳に挟んでいる写真は、とても珍しい写真。
早起きしてカレの家に行ったときに、お母様から借りたカメラで撮影したもの。
いつも笑顔でいるカレにしては珍しい、無表情のカレ。
その何も考えていない、無防備な表情が素敵。
生徒手帳を閉じて、引き出しに入っている、彼を撮影しまくって貯めたアルバムを開いた。
ここに仕舞われているカレの写真は、全て笑顔。
無表情はとても珍しく、素晴らしいものだから。
撮影出来たことが嬉しくて、お守りとして生徒手帳に挟んでいるの。