愛ニ狂ッタ人
第4章 彼女side
―――あれはまだ、
彼と付き合う前だと思う。
彼は何故か積極的に、私に話しかけてきた。
彼を当時は“愛憎”という目でしか見られなかった私は、嫌でしょうがなかった。
憎んでいても、それは憧れと同じ意味を持つ憎しみ。
決して彼が嫌いということではなかった。
だけど。
彼の傍にいると、痛感してしまうんだ。
彼と私の、天と地ほどの差がある違いに。
社会や学校、教室での身分も、
見た目も、
性格も、
人望も。
彼は私が持っていないものを、全部持っていた。
積極的に話しかけてきてくれる彼に惹かれている自分が、確かにそこには存在した。
だけど、同時に離れてとも思っていた。
彼の傍にいる度、彼に優しくされる度。
私が何も持っていないことを、教えられる気がするんだ。