愛ニ狂ッタ人
恐怖心もあった。
彼が好きな女子は、沢山いたから。
私より可愛い女子も。
私より美人な女子も。
私より積極的な子も。
私よりお金持ちな子も。
彼の周りには常に、溢れんばかりの女子がいた。
私も、嗜む程度だが漫画は読む。
その漫画には出てくるのだ。
地味で何の取り柄もない女子が、クラスで1番かっこいい男子を好きになり、その男子が好きな女子に壮絶ないじめを受けるシーンが。
お決まりってほど出てきた。
彼といるのは楽しい。
場の空気を読むのが上手いのか、彼は話題も面白い。
1日中話していたいと思うのも事実だ。
…だけど、同時に恐怖心も日に日に増えて行くんだ。
でも私は彼と付き合う以前も今も、漫画みたいないじめにあったことはない。
女子に呼び出されたことは何度もあった。
だけど、運良くそれこそ漫画のヒーローのように、タイミング良く彼が現れて。
「寄ってたかって、雪愛ちゃんのこと囲むの止めなよ。
そういう陰でコソコソする女子、僕嫌いなんだよね……」
常に笑顔の彼からは想像出来ない、殺気の溢れ出す瞳を、私を呼び出した女子へ向けると。
蜘蛛の子を散らすように、女子は今にも泣きそうな表情で行ってしまうんだ。