愛ニ狂ッタ人






私は、いつもそういう光景を見て思う。




どうして、

そんなすぐに諦めてしまうの?、と。





あの子たちは、彼のことが好きなのだ。

好きだから、私を人気(ひとけ)のない所へ呼び出すんだ。

それなのに、彼から殺気を浴びせられただけで逃げ出すなんて。

あの子たちの彼への恋心はそんなものか、と呆れてしまう。





そんな程度で彼を諦めるのなら。

地味で何の取り柄もない、地味子という言葉が似合いすぎる私でも、彼を好きになることは可能なはずだ。





そう考え、改めて気がついた。

私は彼のことが好きなのだ、と。

彼の殺気を浴びても逃げださない自信がある、と。

どんな子が現れても決して彼への恋心を捨てない自信がある、と。





それからも私は何度も女子に呼び出された。

だけど私は、以前の私とは違う。

彼への本気の恋心に気が付けたんだ。

彼を振り向かせるまで、私は諦めない。

そう決めた私は、タイミング良く現れる彼よりも先に、女子を追い返した。






…渡さない。

彼は、絶対に渡さない。

彼は永遠に、

私のモノなのダカラ―――…。









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