愛ニ狂ッタ人
確かに彼の両親が持つ社会的地位は、素晴らしいと思う。
彼が働く必要もないぐらい、家にはお金があるのだから。
彼と結婚したのなら、一生お金に困らないで済むだろう。
それはとても、誰が見ても魅力的だと思うよ?
だけど、私は違う。
彼の両親の地位なんて、単なるオマケにしかすぎない。
私は彼が手に入れば良いの。
それにたまたま“お金”が付属品として来るだけ。
私を他のお金目当ての馬鹿げた女子たちと一緒にしないでほしいわ。
そもそも私は、彼の彼女候補―――決定事項だけど、一応彼女と言っておく―――なのだから。
愛している彼を見に行きたいと思うのは、当然でしょう?
「ええ、好きよ。
とても素敵じゃない、彼」
「意外だわ。
雪愛ちゃんも財産目当てだったなんて」
「…他の女子と一緒にしないで。
私は彼自身が好きなの。
財産はたまたまついてきただけよ」
「…凄いのね雪愛ちゃん。
王子を好きな女子は殆ど、財産目当てじゃない?」
「私が欲しいのはお金じゃない。
社会的地位でもない。
彼からの、溢れんばかりの愛情ヨ」
フフフッと微笑むと、彼女は引きつったような笑みを浮かべた。