愛ニ狂ッタ人
私は笑うのをやめ、彼女を見た。
「××さんは好きじゃないの?彼のこと」
「わたし?
わたしは好きじゃないわ。
…あの目が、嫌いなのよ」
嫌いなのよ。
彼女の言葉が、まるでお寺の鐘のように、私の頭に響いた。
「きら…い……?」
信じられない。
あの目が良いじゃないのよ。
美しくて、儚くて、奥に何かを秘めたような強き瞳が。
私は、彼の、あの目に、恋をしたのよ…?
「ええ。
あの何を考えているのかわからない目よ。
気味悪いと思うわ。
確かにかっこいいとも思うし、王子って名前がピッタリくるようで、成績も性格も良いと思うわよ?
だけど、あの目に皆騙されているのよ。
あんな…麻薬のような気味悪い目にね」
麻薬。
確かにそうかもしれない。
あの目に囚われてしまったら…もう、逃げられない。