愛ニ狂ッタ人
☆☆☆
僕はその日の夜、1人屋上に立っていた。
学校の校長以上の権力者である僕が、屋上へ入れるのは容易かった。
今日は、眩しいほど大きな満月だ。
まるでアニメに出てきそうなほど、近くて大きな満月。
周りに灯はないけど、昼間のように明るく感じることが出来た。
「…何の用ですか、こんな所に呼びだして」
音もなく、静かに扉が開き、アイツが現れた。
屋上で1人佇む僕を見て、怪訝な顔をしている。
「来てくれたんだ、ありがとう」
「屋上の鍵が開いていたわ。
王子の手にかかれば、容易いことなのね」
「そうだね。
ここは僕にとっては、お屋敷みたいなものだから」
「…で?
そんなお金持ちな王子が、わたしに何の用?」
「まぁ、そんな所に立っていないで、こっちにおいでよ」
本来は雪愛にしか見せたくない笑顔を、アイツ―――園田愛恵へ向けた。
園田愛恵は嫌そうに溜息をついたものの、僕の横に並んだ。