愛ニ狂ッタ人
園田愛恵が落下死したのを見届けた僕は、柵を乗り越え、最初にいた位置に戻った。
そして、用意した缶2本と写真を、全て回収した。
彼女に怪しまれないよう買った、自分用のグレープフルーツジュースも飲み干す。
「……雪愛」
そっと月夜に呟いてみると、溢れんばかりの恋心が押し寄せた。
やっぱり、と確信する。
僕は雪愛を、愛してる。
「……見ーつけた」
「ッ!?」
その一瞬で取り押さえられてしまう美しき声に、僕は急いで屋上の入り口へと振り向いた。
「…ゆき、め……ッ!?」
僕の驚きを気にせず、雪愛は柵の方へと向かい、下を覗いた。
「あーあ、派手にヤったね」
「どうして、ここに……」
雪愛は僕を見て、ニッコリ微笑んだ。
…月さえも、色あせてしまうほど、可憐で美しい笑みだった。