愛ニ狂ッタ人
第6章 彼女side
☆☆☆
私が目覚めると、彼は自分の腕を枕にして眠っていた。
私はそっと、彼の柔らかい髪の毛を撫でた。
空はもう、オレンジ色に染まっていた。
校庭からは、部活中なのか、笛の音が鳴り響いていた。
もう、下校時間なのね。
でも、このままこうしていたい。
彼の傍で、2人しかいないんだと思えるこの空間で、ずっとこうして並んでいたい。
私は穏やかに寝息を立てる彼の隣に、同じように寝転んだ。
しかし、授業中に思い出したからか、嫌な夢を見てしまった。
入学式から1ヶ月後ぐらいに起こった、あの屋上での事件を。
クラス委員長で、先ほどは名前を忘れていた―――園田愛恵が亡くなった事件を。
彼女の死は、事故として処理された。
最初は自殺か他殺と疑われたようだが、司法解剖の結果、彼女の体内から缶1本分のお酒が検出されたから。
彼女は月の美しかったあの夜、1人屋上でお酒を飲み、そのまま転落死したと判断された。
屋上にはその証拠として、彼女の唾液の付着したグレープフルーツ味のお酒の缶が1本見つかっている。