愛ニ狂ッタ人
今の時刻は、深夜2時。
世に言う、丑三つ時だ。
人通りがないことを確認し、私は家へ向かって歩き出した。
一応確認するのは、人だけでなく、警察もだ。
こんな時間に未成年が歩いていては、補導の対象だ。
何をしていたんだと聞かれ、もし先輩の死体が発見されたら。
それでもし、私が犯人だとバレ、逮捕されたら。
…一生、彼に会えなくなってしまう。
私は周りに警戒しながら、家への道を歩く。
両親は今日も仕事で忙しいだろうから、こんな時間に帰っていないはずだ。
まぁ帰っていたとしても、私がこんな夜遅くにどこで何をしていたのかなんて、気にしないんだろうけど。
周りに警戒しながら歩くけど。
遠回りと最短の帰り道、どちらを選んでも、車通りの多い道は通らなくてはいけない。
パトカーに会わないか、私は凄くハラハラしていた。
「……何しているの、雪愛ちゃん」
「ッ!?」
目の前から歩いてきた、上下真っ黒な服を着た人に、話しかけられた。
一瞬警察かと疑ったが、そうではないらしい。
警察は私の名前を知らないし、何より―――。
これは、
彼の、声だ。