愛ニ狂ッタ人
車内の座席に座った雪愛は、不思議そうに僕を見上げた。
その際雪愛の持っていた鞄の中身が、目にはいった。
だけど、気にせず彼女へ微笑みかけた。
「心配しないで。
これ、僕の家の車だから」
「…自家用車って、こと…?」
「うん。
雪愛ちゃん、家に帰る?
送ってあげるから、住所教えて」
心の中では雪愛と呼ぶ僕だけど。
彼女の前で、まだ呼び捨てで呼んだことはない。
「…帰りたくない……」
首を振って、僕へ再び自分の顔を埋める雪愛。
僕はその髪を撫でながら、運転手へ行き先を指示する。
「家に行って」
「ど、どちら様のでございますか?」
「僕の家に決まっているでしょ?」
「か、かしこまりました」
初めてだな、僕の家へ連れて行くの。
てか、誰も連れて行ったことないや。
雪愛は僕の腕の中で、眠ってしまったようだ。
僕は彼女の頭を撫でながら、ふと1つの心配事を思い出す。
大丈夫かな…あの人は。
今、確か家に、母さんいないんだよな…。
うん、大丈夫だ。
そんなに深く考える必要は…ないはずだ。