愛ニ狂ッタ人
雪愛を自分のベッドに寝かせる。
そして近くに、雪愛の持っていた鞄を置く。
やけに重い鞄の中からは、ナイフだカッターだ、物騒な刃物類から、盗聴器や監視カメラだと思われる黒い機械に、スタンガンがはいっていた。
こんなに物騒なモノを持って、雪愛は何をしていたんだ?
あんな夜遅くに、こんな物騒なモノを持って、警察の目を気にしていた。
…想像つくのは、1つしかない。
僕は再度雪愛が眠っていることを確認し、自室を出た。
そして少し急いで、例の部屋へ向かう。
僕がこの家で1番嫌いな、例の部屋は、地下にある。
地下へ行く階段へ続く扉を開けようとすると。
先ほど僕へ話しかけてきた、メイドがやって来た。
その右腕には、真っ白な包帯が巻かれていた。
僕は何も言わず、地下室へ続く扉を開けた。
暗くじめっとした空間の中、1つの部屋へ向かうためだけの階段。
全20段もある階段を下りた先にある、真っ白な扉。
僕は静かにノックをし、無言で開いた。
「…あと、もう少しで、お母様帰って来ますよ。
それまで、大人しくしていてくださいね…お父様」
扉の向こうの暗闇にいる人物―――お父様へ向け、僕は声をかける。
向こうから返答はないけれど、入った時から聞こえていた金属音は、止んだ。
僕は「それでは」と言うと、来た道を戻って行った。