さぁ、オレと恋をしてみようか
千織さんの大きな手が、優しく頭を撫でる。


「んじゃ、あとは甘い夜をー」
「……っ!?」


すっかり忘れてた…。わたしは千織さんの身体から離れると、真守さんは手をヒラヒラさせて、車に乗るところだった。


「ま、真守さんっ!」
「はーい?」
「今日はイロイロと、ありがとうございましたっ」
「うん。千織の大切な人は、オレにとっても大切な人だから、当然。気にすんな。んじゃな、千織」
「…おぅ」


真守さんが行ってしまい、アパートの前には、わたしと千織さんだけが取り残された。


「話は、真守から大体聞いた」
「あ…」


真守さんがいなくなったあの5分は、千織さんと喋るためだったんだ…。


「芽衣子、お母さんに電話して」
「えっ?」
「んで、オレに代わって」


突然こんなことを言われてポカンとするも、千織さんの言うとおり、お母さんに電話をかけた。


『あ、芽衣子?もう、どこまで買い物行ってるのよー。賢太くんなんて、ずっと外で待ってるわよ』
「……ごめんなさい。今、千織さんと一緒にいて…。お母さんと代わってほしいって言うから、今から代わるね」
『え?千織くん…?うん、わかったよ』


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