ダイコク
スクナヒメは、モリヒトの身体を清め、傷に薬を塗った。
「傷は残らないでしょう。関節に痛みはありませぬか」スクナヒメはモリヒトに尋ねた。モリヒトは、それには答えなかった。気がかりなことがあった。
「義母様。ヤチホコとはぐれてしまいました。浜辺に行かねばなりません。浜辺でまっているやもしれません。」
スクナヒメは、頷いた。
「ありがとう。どこにいると分かっているなら、大丈夫でしょう。」
「そうとも限らないのです。私がここへ来てから、アタリはどこへ行ったのでしょうか?」
「さあ。。」
「アタリは、いつもいつも、浜辺でウサギを追いまわしております。」
スクナヒメは笑った。
狩りでもしているのかと思ったのだ。
「その、ウサギというのが、ウサギではなく、女人なのです。とにかく、恐ろしいことになりそうなのです。ヤチホコも巻き込まれるやも知れませぬ。」
モリヒトは、、必死に説明した。

息子たちは、いったい外で何をやっているのだろう。
スクナヒメは、頭を抱えた。。
女人を追い回すなどと、、
よろよろとよろけるスクナヒメを、父親が抱き留めた。
「モリヒト、。」
父親は、モリヒトを睨み付けた。
「ウサギもアタリもほおっておいて良い。」
父親は、スクナヒメの方を見ながら、ハッキリと言った。
「私は、デタラメに物を言っておるのではない。ウサギもアタリも、ほおっておいて良い。手出しはならぬ。」

「ヤカミヒメに呼ばれたのは、誰だ。」と、父親は、モリヒトに尋ねた。
モリヒトは、父親の予言をを思い出す。ヤカミヒメに名前を呼ばれると、何がどうなってしまうのか。とにかく、呼ばれてはならないのに。。
モリヒトは、ヤチホコのことが、ますます心配になった。いずれ説明しなければならないにせよ、やはりアタリがどこへ行ったのか、気がかりでならなかった。
「父様、ヤチホコと浜辺で会う約束をしています。」モリヒトは、その場を逃れ、浜辺へと走った。
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