ダイコク
モリヒトは、ヤチホコを探していた。
砂浜に、血の匂いがかすかに香る。
何度もヤチホコの名前を呼んだが、ヤチホコは見当たらなかった。
そもそも、モリヒトとヤチホコが約束したのは今朝方であった。
ひとっこひとりいない。
呼んでみても虚しいような気がしてきた。
諦めかけて、、ポツリと立ち尽くしていると、、カサコソと、草が掻き分けられる音がした。。
ウサギ。
ウサギは、傷だらけのまま、モリヒトの前に姿を表した。
どこか、血生臭い男の匂いがする。
モリヒトは、、始め、女が凌辱されたため、このような匂いが立ち込めているのかと思った。
ウサギは、地面に字を書いた。。
「貴方がモリヒト?」
「ヤチホコが、モリヒトを待てと言った」
モリヒトは、ウサギが変化したときの姿しかしらなかった。
「ヤチホコはどうしたのだ??」と、モリヒトは、尋ねた。
「ヤカミヒメ様を護りに行きました。」
モリヒトは、ため息をついた。
(何ということだ。。封印せねばならないのに。。)モリヒトは、父親の言葉を振り返る。
ウサギは、腹を立てた。
(封印など、そもそも無理な話。護るものもなく丸裸も同然。こころが荒れた男どもが、自由に御殿場を行き来しております。)ウサギがヤカミヒメのことで怒っているのはよくわかった。
ウサギは、不意に、声を出した。
「ヤカミヒメ様は、他の方とは、結婚なさらないことでしょう。ヤカミヒメ様は、ヤチホコ様と想いを遂げられることでしょう。」ウサギは、 予言した。
もう一度、血生臭い風が吹いた。
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