ダイコク
ヤチホコは、両手にこん棒を持って 待ち構えた。が、やって来た兄者たちを見て、驚いた。
兄者たちは、、皆、始めから真剣を振りかざし、迷いなくヤチホコに切りかかる。
手合わせなどとは、全く勝手が違った。
殺気だった兄者たちは、身のこなしも何も滅茶苦茶だった。ヤチホコは、、ひとまず屋根の上に逃れ、息をつくと、
「兄者、ヤチホコは、こちらじゃ」と、大きな声で叫んだ。
(母様、期待に応えてみせましょう)
色めき立つ兄者たちを目の当たりして、ヤチホコは、武者震いした。
そして、門の内になだれ込もうとする兄者たちの前に飛び降りると、心を整え、研ぎ澄まし、隙をなくして、打って打って、蹴倒しまくった。。
闇雲になだれ込もうとしたものは、皆、ヤチホコになぎ倒された。
アタリは、顔をしかめて、唸った。
ヤチホコは、一度だけ眉間を討たれ、瞼の上から血の雫が垂れた。

アタリは、、ヤチホコがたちはだかる前に女人を連れてきた。ヤチホコの目には血がにじみ、それが、誰なのかは、よく分からなかった。
アタリは、にやりと笑った。
「みせしめじゃ」と、アタリは、言った。
アタリは、、あろうことか、松明の火を女人の衣に放ち、ヤチホコの方にほおりなげた。
ヤチホコは、ヤチホコは、すっかり舞い上がり、女人を抱き止める。しかし、、しかしだ。

それは、女人の衣を着せられた人形だった。
ヤチホコは、火に焼かれた。けれども、心はほっとしておった。
ヤカミヒメも、ウサギも、逃げ延びたに違いない。。
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