ダイコク
父親は、子ども達を遠ざけていた。
アタリには、父親が、怒っているのか悲しんでいるのか、それさえも想像できなかった。
父親の言いつけを最後まで護ったのは、ただ一人。ヤチホコだけであった。
兄弟は、皆、剣を抜き、お互いの身体を切り裂きあい、とうとう、大変なことになってしまった。

しかし、それでも、アタリは、少しホッとしていた。
アタリにとって、ヤチホコは恐ろしかった。恐らく、本当に一番強いのはヤチホコだ。皆、けしてその事を口にしようとはしなかったが、、アタリには、その恐怖が拭えなかった。
居なくなってホッとしたのだ。

「不思議なことね。」と、アカガイヒメが言った。「本当に」と、ハマグリヒメが応える。

ヤチホコの回復力は、凄まじい。
火傷の傷痕など、かき消すように無くなった。
否、きのせいなのか、何なのか、、ヤチホコは、ハッとするほどに美しくなった気がした。
ヤチホコは、もう、子どもではなかった。女を知り、色気が出た。
今までだって、女人に可愛がられただろうけれども、、それとは違い、女を魅了する大丈夫になった。

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