ダイコク
アタリは、ふらふらと浜辺を歩いておった。疲れはてていた。自分の中に渦巻くどす黒い憎しみに振り回され、正しい道を示す物もなく、戦っても争っても、課せられた呪いが解けないような、、不毛な世の中に疲れはてていた。
兄弟たちを、追い払った。にやにやと深く考えもせず、アタリが何を言っても「兄者、その通りだ」としか答えない。いっそのこと誰かに責められた方が気がはれるようなときにも、憎しみやら苛立ちやら、煽られて煽られて、。兄弟たちは自分を慕ってくれているのだろうが、あまりにそれが重い。濁流のようだ。自分が作った流れだとしても、その水の勢いはあまりに強く、濁った強いうねりに呑み込まれそうだ。
いつもは、自分を諫めてくれるソネミも、女のこととなると、何も言わなかった。
虚ろな目で、遠くの方を眺めていると、、浜辺の小屋の軒下に、真っ白な綿毛が見えた。
ウサギだ。アタリは、いらいらと殺気だった。
風に血の匂いが混じる。
ウサギは、ウサギの方も、アタリに気がついて、震えた。
アタリは、ウサギに斬りかかり、ウサギがかわして地面に転がったところを小屋の中に蹴り込んだ。
ウサギは、、この日は、えらく美しく見えた。何故だろう。
アタリは、初めてウサギに出会った時、頬に垂れた赤い血の雫を思い出した。
不思議な出会いだった。
アタリは、ウサギの衣を剥ぎ取った。逃げ惑うのを捕まえて、震える女陰が、赤い雫を垂らしているのを見つけた。目が離せなくなった。
アタリには、随分長い間、普通の性欲は芽生えなかったのだが、震える女陰が真っ赤に色づき、赤い雫が、アタリの劣情を誘った。
しばしみとれたあと、、アタリは、ウサギをしっかりと押さえつけ、迷わず自分の衣を捨て、猛りをウサギに押し込んだ。無我夢中であった。
ウサギは、ウサギは、苦しそうな顔をするばかりで、身体をよじってはアタリから逃れようともがいた。
アタリが、ウサギの頬を平手で打つと、唇に傷ができて、真っ赤に腫れ上がった。真っ赤な唇に、誘われているように思えた。
アタリは、恍惚として、唇を夢中で犯した。

ここ何年も、、他のどの女人でもダメだった。
犯すよりは、血を見る方がスッキリとした。
しかし、
しかしだ。
抱いても抱いても飽きたらない。
ウサギの身体は、不思議な身体だった。熟れるほどに、女陰から血を流した。
アタリは、気が遠くなるほどウサギを犯した後、改めてウサギの顔を見た。
ウサギの表情に変化があったことに気がつく。
ウサギ、ウサギ
突如、アタリの耳に、甘い喘ぎ声が届いた。
ウサギが、腰をよじるが、、真綿でくるまれたような暖かいものが、アタリの身体をつつみこんだ。
アタリは、もう一度ウサギの表情を見た。そして、息を飲んだ。
(何という顔をなさるのだ。)
犯しているとばかり思っていたが、女陰の壁が優しくアタリをいとおしんでいた。



< 36 / 38 >

この作品をシェア

pagetop