全てを包んで
課長はもうお店を決めているのか、迷う事なくスタスタと歩いて行く。
大通りから路地へ入って少ししたところにあるお店の前で足を止めた。
「ここで飲み直そうと思うんだけど、良いかな?」
そう言ってこちらを向く。
「あっ、はい。」
と、返事はしたものの、何だか課長のイメージからは想像出来なかったお店だ。
課長に促され暖簾をくぐって店内に入ってからも、やはりイメージと結びつかない。
手書きのお品書きが壁にかけてあるボードに書かれているが、下手…味のある字だ。
店内も、綺麗に掃除はされているのだが、そもそもが古い建物のようで若干ボロい。
お洒落なお店とかが似合いそうだから意外だ。
席はカウンターが8席、テーブルは2席と小さめだ。
カウンター席に着いてからも思わず周りをキョロキョロと見ていると、
「女の子はこういうお店は苦手だったかな?」
課長がこちらを見ながら聞いて来た。