全てを包んで
こんなに素敵な人に告白されて、断れる女性が世の中にいるだろうか。

さっきから心臓はバクバクだし、きっと顔だって真っ赤になっていると思う。

キュンとかドキッとか通り越して、もう過呼吸になるんじゃないかと思うほどだ。

でも、過去の経験が私を臆病にさせる。

上条課長は過去のあの人とは違う。
そうわかっているのに、最後の一歩の勇気が出ない。

はい。の一言が私の口から出てくれない。

「急にこんな事を言って、驚かせてしまってごめん。でも、今泉さんと初めて2人で飲んで、話して、どうしても伝えたくなったんだ。嘘じゃない。だから信じて欲しい。」

上条課長はこんなにも真剣に気持ちを伝えてくれている。

過去になんて囚われてちゃダメだ。

私だって、勇気を出さなくちゃ。

「あの、本当にありがとうございます。私で良ければ宜しくお願いします!」

「本当に?」

「はい。」

「良かった〜。」

そう言って笑った課長の顔は、私が今まで会社で見てた大人の癒しの笑顔ではなくて、まるで少年の様な屈託のないの笑みだった。

昨日から、夢の中にでもいる様な気分だ。

どうかこの夢が少しでも長く続いてくれます様に。






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