全てを包んで
「今日は花見の準備もあって忙しいのに悪いな。」

こんな気遣いも出来るあたり、流石は人気No.1。

「いえ、追加分の資料は量も少ないですし、時間内には終わりますから。」

「それなら良かった。花見の場所取りは定時で上がらないと大変だからな。」

課長も毎年ダッシュで会社を飛び出す幹事を見ているので気に掛かっていたようだ。

「今年は、片瀬さんに場所取りをしてもらって、私は直接買い出しなので、少し時間がオーバーしても問題はないんですけどね。」

そう答えると、

「確かに、女性がヒールで走るのは、大変だよな。」

と、私の足元を見ながら呟いた。

確かにスニーカーに比べたら確実に遅くはなるけれど、ヒールで走る事が問題ではない。

ただ単に、私自身の足の遅さが原因なんです…。

しかし、それをわざわざ言うのも何なので、

「…えぇ、まぁ。」

と、曖昧に笑っておいた。
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