さぼり男子とチョコと眼鏡と。〈BL〉
「早く食べろって!旨いから!」
「絶対、噂されるからな。覚悟しとけよ。」
「問題なし。可愛い親友ちゃんですからー。」
可愛いとか…。
それに、今日の夏希は特に声がでかい。
中庭なんて絶好の演説スポットだぞ。
俺らのこの一連の会話は、
どこまで聞こえているのやら…。
そんなテンションの高い親友の誘い、
断ることはできない。
ありがたく一口を頂いた。
「うま!何これ!」
「だろだろー?」
三ツ星レストランかよ!
いや、行ったことねーけど!
口の中でとろける肉。
こんな旨いもの初めて食べた。
そりゃ争奪戦になるわけだ。
「まだ食べる?」
「いいよ、さすがに悪いし。」
「何を言うか!300円だぞ?」
「その前に、手が熱い。」
冷たかった夏希の手は、
俺の体温が伝わったのか
ほんのり温かくなっていた。
ごめん!なんて笑いながら手を離される。
よくよく考えたら、
こいつイケメンで優しいし。
普通の高校だったら
ラブレターの嵐なんだろうな。
そうなったら、一緒にいられる時間も…。
何を考えてるんだ、俺は。
「翔?生きてる?」
「え?」
「ぼーっとしてたから。そろそろ中入る?」
「お、おう…。」
夏希が後片付けをして席を立つ。
さっき落としたパンを、
そのまま置いていくわけにはいかない。
蟻にやるために少しだけちぎって
残りはゴミ箱に捨てると、
俺も夏希の後を追いかけた。
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