さぼり男子とチョコと眼鏡と。〈BL〉
□人の手って意外と温かい。
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そろそろ2限が始まるだろう。
そんな頃。
不意に屋上の重い扉が開く音がした。
こんな時間にここへ来るヤツは、
誰だかわかりきっている。
「まーたここにいる!」
「うるせーな。」
俺より少し暗めの茶髪で、顔の整ったこいつは、
親友のひとり「夏希(ナツキ)」だ。
成績は良いらしいが、
彼も俺と同じく授業をさぼりにくる。
適当に隣に寝転がった夏希は、
大きく伸びをした。
「翔はここが好きだねー。」
「好きってか、ここしかねーし。」
「担任が探してた。だから、屋上にいますって。」
「はぁ!?言ったのか!?」
「うそ。」
「なんだよ…。」
夏希は昔からこうだ。
毎日をエイプリルフールと勘違いしている。
冗談がいきすぎて、
過去に何度か喧嘩したこともある。
そして何より、
三人の中で一番テンションが高い。
「お前、成績いいんだろ?」
「そうでもないよ。英語だけ。」
「うわ、すげー…。」
「英語以外は全然駄目だけどなー。」
ピアスだってしてるし、
髪の毛も頻繁に染めてんのに。
いつの間にか差をつけられて。
小学生の時は俺の方が優秀だった。
今は色々あって勉強が大嫌いだ。
言い訳なんだろうけど…。
そんな俺の表情で、何かを察したのか、
夏希がおもむろに課題を取り出す。
「夏希先生が教えてあげよう!」
「えぇ……。」
「まずは数学から始める!」
「まじか…。」
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