さぼり男子とチョコと眼鏡と。〈BL〉
裏に回ると、ちょうど陰になっていて
時折吹く風がとても心地良い。
適当に壁にもたれ掛かり、
缶ジュースを開ける。
「あ、チョコレート食べる?」
「ちょこ?」
「そう。俺がつくったやつだけど。」
手渡されたチョコレート。
丸くて綺麗な、ココア味のトリュフだ。
「お前、いつの間にスイーツ男子になったんだよ。」
「ちょっと色々あってさー。」
「色々?」
「妹の影響かな。」
「あぁ、琴音ちゃんのな。」
夏希の妹、琴音(コトネ)は現在中学三年生。
昔は遊ぶことがあったけど、
今はもう、ほとんど会っていない。
お菓子づくりに目覚める年頃か。
「それでお前も始めたの?」
「やってみると意外に楽しくてさー。」
最初は手伝い程度だったらしい。
そんな良き兄貴がつくったチョコレート。
小さいから、ひとくちで。
「おぉ、甘くて旨い。」
「本当に?良かったー!」
「今度、裕太と家行くから
アップルパイつくってくれよ。」
「難易度たっか!鬼畜!」
「難しいの?じゃあクッキー。」
夏希は、了解!と敬礼する。
これならバレンタイン貰っても
ワンランク上のお返しが出来るし、
やっぱりこいつ半端ない。
「なつ、普通の高校
行きたかったとか思わねーの?」
「んー?思わないなー。」
「絶対モテモテ。」
「翔、その手の話ばっかするよなー。
俺は三人でいられたらそれでいいんだよ。」
「そう、か…。」
いつもの会話トーンで、さらりと返される。
そばに俺と裕太がいることを
当たり前だと思ってくれているんだ。
夏希の言葉は、素直に嬉しかった。
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