さぼり男子とチョコと眼鏡と。〈BL〉
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屋上は相変わらず静かだ。
この前は色々怖い思いをしたからな。
閉じ込められないことを祈る。
ソーラーパネルのようなものが
設置されている場所からは、
都会の景色を眺めることができる。
夏希のお気に入りの風景。
冬場は風が直に当たるし、
夏場は絶級に暑いのが難点だが…。
「屋上にも自販機ほしいよな。」
「誰も来ないのに?」
「はぁ?俺が来るだろ。」
「やだ翔さま怖い…!」
笑いながら、適当に提出物を広げる。
意味のわからない数列を見て
一発でやる気が失せた。
裕太に教えてもらおうか…。
どうせ今夜からしばらく泊まりだからな。
この間、文字を書くのに
使用した消しゴムを放り投げて遊ぶ。
汚れてしまったから遊び用になった。
いや、まず遊び用ってなんだよ。
夏希は懲りずにフェンスの向こう側にいる。
「風が涼しーい。」
「どこがだよ。暑すぎるから。」
昨日も今日も、暑い暑いとばかり
言っている気がする…。
夏希も裕太も暑くないのかよ。
去年よりも早く、
最高気温が上がっているのに。
すると、夏希がこちらへ戻ってきた。
「良いこと考えたー!」
「なに。」
「家からちょい遠いけど、
林の中に廃墟とお墓あったよな。」
「たぶん…。」
あるのはある。
が、自転車では難しい距離。
なんせ周りは高層ビルや
マンションが建ち並んでいるから、
本物の廃墟なんて
首都圏を出なければ見つからない。
まてよ、
廃墟や墓……?
「何するつもりだよ。」
「肝試し。涼しくなるために!」
「はぁ!?」
最悪だ…。
墓はさすがに罰当たり。
かといって廃墟にするのも不法侵入だろ。
それに距離もあるし。
しかしこんな愚痴をこぼせば
怖いから行きたくないんだろう、なんて
言葉が返ってきそうなので辞めた。
「まずはどうやって行くかだなー。」
「かなり距離あんぞ。」
「なら電車だ!」
「夜中に通ってんのか?」
「あっ」
行くのは夜中だ。
栄えてる地帯を抜ければ田んぼ道。
夜中に電車が走っているとは思えない。
自転車でも距離があるし、
車の免許なんて誰も持っていない。
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