さぼり男子とチョコと眼鏡と。〈BL〉




ぶん投げられた消しゴムは、
絶妙な速さ、角度で飛んでいく。

頼む、生徒会室に落ちてくれ…!


「…おっしゃああ!!」

「声がでかい!」

「ごめん!」


神への願いは見事に届き、
それは一直線に目的地へ入っていった。

覗き見ようと、俺もフェンスの向こうへ。


「見えるか?」

「くそ、駄目だなー…。」


柵をしっかり握り、
ギリギリまで体を前屈みにするが。

ベランダの中までは
覗き見られないことに気付く。

もし、変な所に落ちていたら?
もし、裏返っていたら?

不安はたくさんある。


「あとは待つしかないかな…。」

「も、もう1個くらい投げねー?」

「無茶苦茶だなー…。」


よく見たら、ここめちゃくちゃ高いし。
怖すぎだろ。確かに無茶苦茶かもしれない。


「3限は1年がグラウンドを使う。
早めにあっち戻るぞ。」

「御意!」


俺が先にフェンスに手をかける。

簡単に身を乗り出せないように
歪な形をしているから、
思いの外上がりにくいことに気付く。

と、その時…!


「うわっ!!」

「翔!」


うっかり足を滑らせて、落っこちる。



(俺、死んだな。)



正直これしか思い浮かばないくらい、
心の底から確信していた。

しかし。



「ってぇ……。」

「翔!大丈夫か!?」



着地した場所は、わずかな体温を感じた。

驚きも覚めないまま顔をあげると、
そこは夏希の体の上で。


「翔…!」


俺をかろうじで受け止めた彼は、
腕から血を流しながらも、
俺の体を一番に気にしてくれて。


「なつ……。」




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