地味優等生→リアルシンデレラ ~みつけてください王子さま~
「あ、田原」

 私の後ろに目を向ける彼をたどって振り向くと、田原さんが立っていた。田原さおりさん……洸君のことが好きな人だ。

 田原さんは一瞬こちらを見ただけで、すぐに彼に視線を戻すと近づいてきた。

「ほら、早く教室行こ!」

 まるで私なんか存在しないもののように、洸君の腕に自分の腕を通して引っ張っていく。

「ち、ちょっと待てって。一人で行けば良いだろ」

「えー、やだぁ、学期初日から遅刻なんてしたら駄目でしょ」

 田原さんがぎゅっと腕に抱きつくようにして、上目遣いで洸君を見ていて、その二人の姿に説明できない何かが沸いて出てくる。

 混乱して、訳も分からず目が熱くなって、私は二人から目を反らして逃げるように追い越していた。

「あっ、璃子ちゃん!!」

 それでも、彼の声に、私の足が馬鹿正直に留まった。

「また、後でね」

「うん」

 なんとか一言絞り出して歩き出す。

「……ねぇ、ねぇ、何あの子。めっちゃ無愛想じゃない?」
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