地味優等生→リアルシンデレラ ~みつけてください王子さま~


 楽しい時間って、どうしていつも早く終わってしまうんだろう。

 お客さんのいなくなった廊下。

 放課後、皆で協力して飾り付けた教室は片付けられて、その名残が隅に追いやられている。

 もうすぐ、体育館で閉会式が始まり、それから後夜祭に続く。他の生徒は体育館に行っていて、校舎に残ってる人はほとんど居ない。

 私は教室で一人。髪をほどいて、眼鏡を取る。

 勇気を持って、と自分に言い聞かせる。

『ちゃんと自分の想いに素直になる』

 洸君も好きな人がいるんだ。それを知るのはとても怖い。だけど、私も、洸君に伝えたいんだ。

 それを自覚すると緊張のドキドキが増していて、水の中で息が出来ない時みたいにもがきたくなる。体が自分のものじゃないようで、何度も深呼吸をして、頭の中で洸君に告白する自分をイメージする。

 よし、と意気込んだ時には閉会式が始まる時間で、慌てて教室を飛び出した。
< 164 / 220 >

この作品をシェア

pagetop