地味優等生→リアルシンデレラ ~みつけてください王子さま~
 不意に優しく笑った洸君は何かを呟くと、冨岡君の制止を振りきって私の元へと近づいてくる。

「おい、立花!?」

「待ってよ洸!」

 舞台の上にいた子達の止める声。だけど、洸君はそこから飛び下りて、私に手を差し伸べた。

「俺の好きな人は、たった一人だけだから」

 ざわついていた声が一層煩くなる。信じられない思いで固まる私。洸君は差し伸べていた手で私の手を握ると、そのまま横の出口の方へと歩き出した。

 後ろからは悲鳴やら困惑の声やらで、まさしく混乱していて、逃げるように外に出た洸君の横顔はそれと相反して清々しい、晴れ晴れした表情だ。

「だ、大丈夫かな」

 舞台でこちらを見ていた田原さんの顔を思い出して、背筋が凍る。不安になって思わず口に出た呟きに、洸君は一度だけ振り向いて、また前を見る。

「嫌だった?俺と来るの」

「嫌じゃないよ!!むしろ……」

 嬉しかった。本当に。嬉しすぎて、これが現実なのかと疑うほど。だって、ずっと片想いで、遠くから眺めているだけだったから。

「その涙は、俺が喜んでいい涙?」
< 178 / 220 >

この作品をシェア

pagetop