地味優等生→リアルシンデレラ ~みつけてください王子さま~
 言われて泣いてることに気づく。急いで拭おうと立ち止まった私に洸君も止まって、優しく拭ってくれた。

「ありがとう」

 その手が少し震えていて、洸君も恥ずかしそうに「いいえ」と言って手を離す。その様子に私まで恥ずかしくなって、さっきから落ち着かない胸を押さえる。

 ほんとに、ほんとに、洸君が私を好きに……?

 信じられないけど、信じて良い?

 握った手はそのままに歩き始める彼に合わせて、私も足を動かす。斜め前の洸君の後ろ姿をこっそり見つめる。

 肩のライン、シャツを折り曲げて見える腕、耳の形とその裏にあるホクロ。このホクロの存在を本人は知っているのかな、とかどうでも良さそうな、けれどとても気になることを考えていたら、洸君がこちらを向いてホクロが見えなくなった。

「……そうだ、俺に何て呼んでほしい?」

「え、璃……」

 普通に璃子と、言いかけて止まる。

 そう、一種の疑問が私の脳裏を過った。もしかして、私を柊璃子だと分かっていないんじゃないかと。

 いつかの、商店街で会った時のように、私を私だと思っていないのなら、あの言葉の意味を考え直す必要がある。
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